急に年末感出してきやがって。
繁華街に怒声が上がる。
深夜の混んだ電車にも殺伐とした空気が漂う。
何かちょっと気に入らないことが起こると食ってかかろうとする輩たち。
もはや臨戦態勢だ。
日々のストレスか。
酔うと気が大きくなるのか。
集団だと気が大きくなるのか。
奴らは攻撃を向ける相手を虎視眈々と狙っているのだ。
これから電車に乗って帰らなきゃいけないのにそんな頭おかしくなるまで飲まなきゃいいのに。
いい年して歯止めがきかないのか。
暴れだすやつは残念ながら大抵おっさんだ。
できるだけ近づかないようにしておけばいいんだけど。
なんか知らんけど火の粉が俺に飛んでくる。
呼んでいるのか。
数年前、年末の山手線。
満員電車で喧嘩を始めたおっさん。
ちょっと離れていたから知らんぷりしてたけど。
暴れ出してドミノのようにこっちまで人が押されてきた。
離れたところで女性の叫び声。
「ちょっとなんでみんな知らんぷりしてるの、男のくせになんとかしなさいよ!」
気づいたらおっさんと俺の間に関係ない女性一人、押しつぶされていた。
体を入れ替えてかばおうとして強引に体を捻じ込んだら、目の前におっさんが。
標的は俺になった瞬間だ。
「なんだお前は!」
なんだお前はじゃないよと思いながら、暴れるし、襟首掴まれるし、押さえつけながらちょうど着いた駅のホームに押し出した。
原宿駅だった。
4、5人の男性が雪崩れるようにホームに飛び出た。
おっさんの標的は未だに俺だ。
周りの人が止めようとするがおっさんは止まらない。
無抵抗主義を決め込んで、手を後ろに回し、黙秘した。
誰かに腕を押さえられたおっさんは足を振り上げ俺に蹴りを入れてきた。
もう無理だ。