2019/12/14続き

舞台での挨拶なるものを終えて、監督と川上さんのサイン会のようなものに付き合う羽目になる。
たいていのファンは二人と話し、サインなんかをねだっていたが、何人かは気を遣って僕にもサインを要求してくれた。
CDを売るためにこの場まで顔を出してはみたが、なんとこの会場内でものの売り買いは禁止されているらしい。
なんともはや、悲しい現実だ。
一体どういう理由でそうなのか根掘り葉掘り聞いて納得するか楯つくかしたいところだが、半分部外者だし大人なのでやめておいた。

今日は用事がまだあった。
高校の同窓会という名の忘年会が六本木である。
千葉にあった学校なのになぜ六本木か。
それも男子校なのに、野郎達の集まりに行く必要はあるのか。
いや、野郎じゃない、もはやおじさん達だ。
卒業以来けっこう毎年行われてきたらしいが僕は音信不通、住所不定無職おまけに低収入だったので声がかかることはなかったが、
時代の、テクノロジーの進歩とはすごいものだ。
フェイスブックというもので見つかって去年から声がかかるようになった。
どうすべえかなあ、といつも通り悩み、まあいいやとほったらかしにしておいたが、再度通知が来た時には参加者に名前が連ねられていた。
会費の問題もあるだろうしちょうど東京にいるしと腹を決めた。

監督と映画の会場を出て一服していると、彼が「ぜひこの後一杯やりましょう」と誘ってくれた。
こういうこともあんまりないし、まだ20時とかだしまずは映画の打ち上げに参加することにした。
監督と主演女優の川上さん、助監督の若い青年、あとは広報の人なのかおないくらいの髭のおじさん。
僕を入れた5人。
歩いてすぐのハモニカ横丁に逆戻りだ。
普段あまり関わることのないジャンルの違う人たちと飲んで話すことはいいことだ。
どんな話を聞かせてくれるのだろうと席に着いたが、挨拶を交わし乾杯をし、ちょこっと話ししばらくすると困った展開になった。
髭おじさんと川上さん、監督と助監督という組み合わせで2×2で話し込み出した。
しかもよく知らない映画の話だ。
最初はちょっと聞いてくれた。
「映画館には普段いきますか?」「いやあ滅多に行きません、こないだ子供とアナと雪の女王を見に行ったくらいです」
と、このキャッチボールだけで、ああこいつはあまり話にならないなと思われたんだろうか。
困ったぞこれは。
せっかく来たのに完全に浮いてほっとかれてるやつだ。
思えば大人になってから、酒場に行き、話をするのは音楽という共通点を持つ人ばかりだった。
複数人で話してても、中心は結構自分だった。
なのに今は。。。
しかしここであきらめるわけにはいかない。
共通の話題があるはずだ。
しかし彼らの話題は映画のことばかり。
これには少々びっくりした。
僕らは普段、音楽のことなんか話題にしたりしないからだ。
「エドシーランの新しいの聞いた?」
「米津なんとかって実在しないらしいよ」
「JASRACについてどう思う?」
なんて話題では絶対に酒は飲めない。
酒を飲む時くらい、音楽のことは忘れたい。
しかし映画の人たちはどうやら違うらしい。
さらに普段顔を合わせている人同士ではないか。
珍しいやつがゲストで来てるんだからもっといじってくれてもいいではないか。
少なくとも逆の立場だったらそうするんだけどなあ。
人数が奇数なのがいけないのかなあ。
難しいもんだ。
と思いながら夜は更けていったのだ。

2019/12/28

電車では本を読んでいたい。
車移動では読めないし、家ではやること次から次へとあって無理。
電車で、携帯いじるのなんかやだし。
けど見渡すと8割がたスマホ見てる人たちだ。
スマホで本を読めたりもするらしいからな。
あとは眠気との戦いだ。
電車に揺られるとすぐ眠くなるのは、胎児の頃母の腹のなかで揺られたあの感じに近いから、なのではないか。

年が暮れる。
なんとか体はもった。
正月は釣りしよう。

2019/12/14

長い長い日だった。
祐天寺で17時まで仕事をしたあと、吉祥寺に向かう。
渋谷で東横線から井の頭線へ乗り換える。
渋谷の駅はぐっちゃぐちゃだ。
地下の下の方から地上に出るまでにうねうねと迷路のような道を歩く。
やっと出たと思ったらものすごい人ゴミで早くもやる気が失せた。
ずっと工事をしてるこの街は、果たして全部が終われば便利になるのだろうか。

吉祥寺にようやく着くと19時前、まだちょっと時間がある。
早く動いてきてよかった。
ハモニカ横丁に潜り込む。
ウロウロして飲み屋を選んだ。
一人で飲むというのはいまだにドキドキする。
決断力のない人間だ。
ドアもない店の方が入りやすくていい。
L時のカウンターがあるだけ。
立ち飲みスタイル。
ビールはサッポロ。
自分にしては案外早めに決めた。
樽のビールをジョッキで一杯。
串二本と煮込み。
ガツというのがどこの部位なのかは詳しく知らないが、メニューにあると真っ先に食いつく派だ。
あとは鳥の皮だ。
皮はタレだ。
本当なら10本くらい食いたいとこだが、まだ1軒目だし、夜は長いし2本にしておく。
誰かと飲めばダラダラとベシャリを入れながら、相手の好みや挙動を気にしながら注文して長居する羽目だが、一人きりは違う。
黙々と飲んで食う。
5分で終了だ。
誰かが声を上げたヒューガルデンが耳についた。
ヒューガルデンの樽があるとは。
数十年前の禁断の恋を思い出す。
いつもその女(ヒト)とはデートの終わりに新宿のパブでヒューガルデンを飲んでから別れた。
甘くほろ苦いデザートビールだ。
「東京の恋人」という映画とどこかしら似ている恋だった。
こんなことを思い出すなんて今日は少しノスタルジックでセンチメンタルな日だ。

そしてこの後、その「東京の恋人」の舞台挨拶に出向くのだ。
まさか自分がそんな役目を果たす時が来るとは思っていなかった。
「この映画の音楽を担当した東京60WATTSの大川です」
そんなセリフを頭の中で何度か繰り返しつつヒューガルデンのジョッキを空けた。

2019/12/11

来てしまった。
監督からのメールが。
映画の上映が始まる前に、一度どこかで舞台挨拶に来てくださいと言われ、薄い返事で濁していた。
お愛想かもしれないし。

映画はとりあえず5回くらい上映される。
どんなだったかツイッターで書いてあるので読んでいた。
毎回満席で、舞台挨拶は役者さんたちが大挙してやって来て盛況のようだ。
どうやら僕はお呼びでなさそうだ。

もしも、もしももう一度強く誘われたら重い腰を上げようと思ってはいた。
そして
「最終上映日、吉祥寺、登壇セヨ」との召集令状が届いたのだ。
どんなツラしてどんなコメントを言えばよいか。
監督はじめ、役者の皆さんは、映画を作り上げたという自負があろう。
ONE TEAMだ。
それに比べ僕は10年以上前に作った曲を使ってもらっただけではないか。
だいぶにわかだ。
「音楽を担当した大川です」
とでも言えというのか。
久石譲でもあるまいし。

しかしこの先、映画の舞台挨拶に参加できる可能性は、ノーベル賞受賞会見くらい確率的が低い。
人生の思い出にでておくのも一興か。
こういう時、ロックの人はサングラスなんかかけて、うつむき加減で、言葉少なに挨拶するんだろう。
不機嫌な顔して「別に、、」とか言ってやろうか。
いや時期が時期だけに思いっきり外すだろう。

あとそうだ、どんな格好するんだ。
一張羅なんてないぞ。
アオキで買った背広どこにしまったけな。
いやあでもなあ、そんな背広で行ったら似合わなくて笑われそうだ
ロックの人っぽくロンTに破れたブラックジーンズか。
いや、それじゃリンドバーグだ、今すぐキスミーだ。
困ったもんだ。

ハーモニカ横丁でべろんべろんになってから行くか。

2019/12/10

Wを観た。
女芸人のやつだ。
一昨年去年観てあんまり面白くなかったからスルーしようと思っていた。
が、ちょっとネットで話題になっていたので、観てみた。
面白かったーー。
「ウエルカムトゥシンカンセン」が良かった。

2019/12/9

やってしまった。
突然、頭にものすごい衝撃。
後ろから襲われたのかと思った。
棍棒かなんかで頭をガツンと殴られたのか。
違う。
自分でだ。
車の後ろのハッチを閉めようとして自分の頭に当てたのだ。
なんとまあいやはや。
ばかちんだ。
あまりの衝撃と痛みに数分悶えた。
傷口はどうだ。
割れたか?
あたりは暗かったので、手で頭部を抑え、月明かりを頼りに手のひらを見ると、血が、、、。
やばい血だ。
いや血が出たほうがいいんだっけ。
出ないとむしろ危険なんだっっけ?
そして血が苦手な僕は自分の血を見て気持ち悪くなる。
いや、この気持ち悪いやつはやばいやつなのか。
脳に来てるのかしら。
数分の間、頭をティッシュで押さえてじっとした。
だんだんおさまってきた。
ズキズキするけど。
別状はなさそうだ。
周りに人がいなくて良かった。
みっともない。
けど人がいなくて良かったと思えて良かった。
倒れて動けなくなってたら、人が気づいて救急車を呼んでくれて、九死に一生を得てたら近くに人がいて良かったと思うだろう。
大した量じゃないがなかなか血は止まらなかった。
が、大したことなさそうなので運転して帰った。
なんだか首が痛む、気がする。
ムチ打ちみたいなのか。
とりあえず自分の名前と生年月日を言ってみる。
大丈夫だ俺。
あれだけの衝撃を受けても人間簡単には気絶したりしないもんだ。
よく刑事ドラマとかである、後ろから殴られて気絶するパターン、あれはよっぽどの力で殴ってるんだろう。
ぞっとする。
下手したら死ぬではないか。
その、死なないけど気絶する絶妙な手加減を犯人は知っていることになるな。
さて明日病院に行ったほうがいいのだろうかな。

2019/12/8

町田さんから連絡があった。
あの宮前町の大家のおばあちゃんだ。
入間に来て家探しをしたとき、マンションやらいろいろ見たが、1番気に入ったのが町田
さんちの離れだった。
部屋はふたつ、台所はひとつ、トイレもひとつ、たったそれだけの古い平屋だ。
縁側があること、玄関が広いこと、トイレが広いこと、などなど。
あとは日当たりがとても良いこと。
東京のマンションと間取りが似ていた。
東京のそれはワンエルディーケー・テラス付き。
入間のそれは二間・庭付き。
洋から和への大々的な変化だ。
洋の部屋は、バストイレが一箇所に押し込められていたし、キッチンはライクアキャットヘッド(猫の額)だった。
良いのは職場まで1分、妙に広いテラスがとても気に入っていた。
洗濯物を広々干したり、キャンプテーブルを置いたり、七輪で肉を焼いたりできた。
けど一度隣のマンションの人からケムいと苦情が来てやめた。
さすが東京、隣のマンションが飛び移れるくらいニアーなのだ。
そしてなにより家賃が高い。
同じような広さの平屋で値段は3分の1になった。
車は庭先に停められた。
東京はだいぶ遠くなったけど、そんなに用事はなかったし、車でビューンと行けるのは気持ちよかった。
町田さんちはすぐ隣だったけど、間に塀みたいなのあったし、なにより距離の取り方が上手な人だった。
お世話を焼いてくれるがズカズカ来たりしない、気づかないうちにやってくれたりする。
うたこが生まれてからはだいぶお世話になった。
赤ちゃんより大きくなってからだけど、預かってあげるからちょっと用事済ませたり、寝たりしときなさい、なんて感じにとても助けてくれた。
うたも、まちださんちであそぶーなんて言ってなかなか帰ってこなかったりした。
風呂場は広さはあったけど、風呂桶は古い小さいやつだった。
正方形で深くて、入るとき足を上げてよっこらしょタイプのあの水色のやつだ。
小さい子を入れるのに大変だろうと、途中で新しくしてくれた。
浅めで長方形でクリーム色のやつ。
足を伸ばして、お腹にうたを乗せて入れるようになった。
60ワッツを休止して、ちょっとしたら山さんが「たけしくん、バンドやろうぜ」と誘ってくれた。
正直バンドはしばらくいいやと気乗りしなかったくせに、気づいたら曲作ってツアーしてアルバムまでできた。
タイトルは「入間市宮前町6-37」という現住所にした。
ジャケットは平屋の縁側にゴンが座ってる写真にした。
嫌がるかなと町田さんにエクスキューズはした。
離れってことは住所一緒だしね。
そしたら、あら嬉しい!こんな素敵なの作ってもらってって。
これ買った人が訪ねて来たりしないの?って友達が心配して言った。
いるかもしれないけど、そしたらお茶でも出して縁側で話でもしようと思っていた。
人恋しかったのかな。
残念ながら僕が在宅してるときに来る人はいなかった。
記憶は曖昧だけど、確か町田さんが家の写真を撮ってる人がいたと言った。
ごあいさつしたらね、ニコニコお話ししてくれたのよって言ってたから良い人だったようだ。
3年くらいして、うたが保育園に通い出した頃、知り合いの不動産屋のおばちゃんが、手頃な一軒家見つけたわよって教えてくれた。
小さいけど二階建ての新しいめの家だった。
ちょっと家賃は高かったけど、とても気に入ってしまい引っ越すことにした。
ちょっとだけ近所のトラブルがあったのもある。
町田さんには申し訳ない気がしたし、とても残念がってくれた。
町田さんは数年前に旦那さんを亡くしていた。
とってもいい旦那さんだったことは話を聞いていればわかった。
ただ、子供が巣立って、時間ができた頃、町田さんが外に出て働きたいと言っても頑としてノーだったらしい
昔のご主人ってそういうとこあるよね。
うちの親父もそうだった。
まだ生きてるけど。
町田さんはちょっと早めに旦那さんを看取ったあと、翼が生えたように外に出るようになったんだな。
違うな、それだと旦那さんを憎んでたみたいなニュアンス出ちゃうな。
お父さんをきちんと想っていたし、お父さんの言うことをきちんと聞いていた。
お父さんを最期まで見届けたから、これからはできることをどんどんやろうってなったのかな。
町内会の役員とか、老人会の会長さんとかをね。
忙しそうに毎日、車や自転車で飛び回ってた。
そんな人だから、うちが引っ越して、うたともそんな会えなくなって寂しいかもしれないけど、やることいっぱいあって忙しいから落ち込んでる暇もないだろうと思った。
宮前町を出てもう5.6年たった。
こないだ、うたと駅の向こうの映画館へアナと雪の女王を観に行った。
帰りテクテクと、公園を見つけるたびに寄り道しながらゆっくり歩いてると、オシッコがしたいと。
映画館を出るときにちゃんとしたけど、そういやもう1時間以上経っていた。
大きいコーラを全部飲んでたし。
急いだけど、まだ家は遠かった。
そうだ町田さんちはすぐそこだと、うたに提案した。
「まちださんだれ?」
「前住んでた家の大家の町田のおばあちゃんだよ」
「しらない」
ショックだった。
子供の記憶とはそんなもんか。
あんな孫のように可愛がって遊んでもらったのに。
なかなか家に帰ってこなかったのに。
でも会ったら思い出すだろうとピンポンした。
けどお留守だった。
相変わらず飛び回ってるのか、この時間はスーパーかもしれない。
うたが引き続き「オシッコ!」と叫ぶので諦めて神社まで走った。
そんなことがあった翌週、町田さんから連絡があった。
行ったのを近所の人にでも聞いたのかと思ったら違った。
男の人が訪ねてきたのだという。
その人曰く、友人にCDをコピーしてもらい、タイトルの住所を訪ねてきた。
町田さんはもう昔に引っ越した旨を伝え、連絡先を伝えようか迷った挙句、個人情報なのでやめた。
そしてその人の連絡先をいただいたので、お伝えしようと思ってと。
むーー怪しい。
連絡したところでどうなるというのか。
わざわざお訪ねいただきありがとうか。
いやそもそもなぜ今になって。
CDが確か2012年だからもう7年経つ。
さらにコピーとは。
せめて買ってくれたなら。
でももうどっかで買えないか。
今後もうこういうことが無いようにするには。
そうだ、次作をリリースせねば。
実はもうだいぶ前にレコーディングは終えている。
あとは吉川さんの編集がなされ、ジャケットを作り、量産すればリリースなのだ。
タイトルはちょっと迷っていたが、この件で固まった。
「さよなら入間市宮前町6-37」というのでどうだろうか。
そうすればもう訪う人もいないだろう。
ただしその友人がそれを買って、彼にコピーを渡しさえすればの話だ。

2019/12/6

60ワッツは2ヶ月ぶりのライブだった。
前回に味をしめEGにEGを弾いてもらった。
EGというのは彼の芸名なのだ。
本名は榎本げんじろうという。
エレキギターで弾き語りをする彼だったり、2人ユニットだったり、わりとおとなしめなとこしか見たことがなかった。
ギターももちろんカッコ良いが、歌が良い、なんとも言えない色気がある。
コーラスもうまい。
逸材だ。

山口の進くんはずいぶん前、2004年か5年だかにツアーをしたoutlawのベースボーカルだった。
ツアーの記憶はあまり無い。
仙台でやった気がする。
森さんによると、仙台発、苫小牧行きのフェリーに一緒に乗って北海道の地をともに踏んだらしい。
たけし日記をさかのぼれば、その記録はあるはずだが、残念ながらもう確認できない。
進くんとはその後、桜新町の居酒屋で飲んだ記憶がある。
わりと仲良くなったのだ。
その時彼の彼女がいた記憶もあるが、それは昔のことなので蒸し返すまい。
そこで「ブラジャー事件」のことを聞いたと彼は言う。
たけし、伝説の鉄板ネタだ。
だがそれは昔のことなので蒸し返すまい。
その後進くんとは連絡は途絶えていた。
バンドは解散し、新しいバンドを組んだことは知っていた。
こないだ大阪のソロライブで一緒になり、10なん年ぶりに歌を聴いた。
そして今日バンドでの歌を聴いた。
その歌には10なん年分の重みが加わっていた。
彼の歌う背中を見ながら10なん年の月日を考えていた。
果たして僕の歌には10なん年の重みがあるのだろうか。
色々あったけど身軽になった気がするから、重みじゃなくって軽みが加わってるかもしれない。
今度いつ会うか決まってないけど、きっとどちらも歌い続けてるだろうから、その時までには重みを加えておきたい。
あの曲良かったなあ。
今度題名聞いてみよう。